西野克さんのラジオ

埼玉県川口市の川口太陽の家に通う西野克さんは、常に何かを探しているようです。全盲の彼は施設を歩き回りながら何かを触り、かじり、耳や目に入れることを繰り返します。靴の底、古着、自身のトレーナーのタグなど。その行為は身の回りのものの確認であると同時に、その意図だけでは説明できないほど、彼にとって何か、感覚的に大切なものをじっくり味わう時間になっているのかもしれません。その静謐な時間は、せわしなく動き回る他の利用者の方々との関係の中でより際立ち、彼の存在がより一層魅力的にあらわれていきます。

ウエス、機械類の油を拭き取るための布ですね、このウエスを製作する作業班にいる西野さんに寄り添うのは、スタッフの森田博子さん。彼女は西野さんの行為をとても丁寧に観察し、それらをユニークかつ優しい言葉で表現します。「靴底などを口の中に入れてすごーく丁寧に噛んだり」とか。彼にとって手がとても大切な機能なので、何かに手で触るときは、「ほんとこの辺りで、そーっと、タッチはそーっと」などですね。こういった言葉で語られます。「気がついたら捨てずに取っておくようにしています」と言いながら、行為の痕跡の物品を一つひとつ保存しているというのですから、この「まなざし」は一体どうやって現場で培われていったのか、とても興味深いところです。この番組では、西野さんの行為にまつわるエピソードが、森田さんのまなざしがあふれる音声で語られます。

※本ラジオ番組は2020年1月11日から15日まで、Rightsが東京芸術劇場で実施した「まなざしラジオ!! in 芸劇」の会場内で放送されたものです。会場の様子やラジオの詳細は、厚生労働省 令和元年度障害者芸術文化活動普及支援事業 南関東・甲信ブロック 広域センター 東京アール・ブリュットサポートセンターRights 報告書「まなざしラジオ!!」をご参照ください。

■西野克さんのラジオ01 オープニング

■西野克さんのラジオ02 西野さんの日常行動

■西野克さんのラジオ03 変化と表現

■西野克さんのラジオ04 森田博子さんのまなざし

photo by Junichi Takahashi

おすすめコンテンツ

  • イベントに参加する
  • Rightsラジオ
  • 写真でRights