【レポート】障害のある方のための特別鑑賞会「国立新美術館開館15周年記念 李禹煥」展@国立新美術館

アーティスト、リ・ウファンの野外作品の写真

10月18日(火)に国立新美術館で開催された「障害のある方のための特別鑑賞会」を当センター専門アドバイザーの真住貴子氏(同館 教育普及室長 主任研究員)にご案内いただきました。

現在国立新美術館では、開館15周年を記念して、国際的に活躍する芸術家、李禹煥(リ・ウファン)の大回顧展、「国立新美術館開館15周年記念 李禹煥」が開催されています。

展覧会の様子をご紹介するとともに、この特別鑑賞会における国立新美術館の取組みやこれからについて、真住貴子氏にお話しいただきましたのでご紹介します。

国立新美術館の休館日に開催された、障害のある方(⾝体障害者⼿帳・療育⼿帳・精神障害者保健福祉⼿帳・被爆者健康⼿帳などをお持ちの⽅と、その付添の方 ※国立新美術館ウェブサイトより)を対象にした特別鑑賞会。今回の展覧会では、インスタレーション作品も多く、鑑賞者が作品の間を通り抜けたり、丸砂利や割れた敷石が敷き詰められた部屋を歩いたり、体験しながら鑑賞する作品が随所にみられる展示でした。

真住さんによると、車椅子の方の安全を考慮し、砂利や敷石のある不安定な床にはマットを敷くといったことも考えたそうですが、作家による作品表現を大切にするために、本展ではありのままの状態で作品を展示することにしたそうです。障害のある方に向けては、通行にあたっての注意書きを設け、また車椅子の方がそのような作品の部屋をショートカットできる通路も用意されたそうです(部屋の入口から作品の鑑賞はできます)。

とはいえこの日の鑑賞会では、不安定な砂利などの上を車椅子で体験されたお客様もいらっしゃったそうですよ。

  

屋外作品。巨大なアーチをくぐることで体験・鑑賞する作品です。

 

画像の奥に見えるドアは、車椅子の方向けにショートカットができる道の出口です。
通常の開館日に比べて来場者が少なく、移動もゆったりできます。

  

美術館入口に設置された屋外作品。作品の中まで入れます。

   

普段の展示でも、バリアフリー対応の充実をさせている同館ではありますが、この特別鑑賞会を設けることの意義について、真住さんにお話をお聞きしました。

特別鑑賞会を行うことで、人込みの中で展示を観ることに不安がある方や、車椅子で移動することで周りの目が気になり躊躇される方々にとって良い機会にしていただいていると感じているそうです。鑑賞の機会はどのような人にでも平等にあるべきで、来場の多い少ないに関わらず、続けていくことが大事だと話します。

また同館では、来館についてご不安な点やわからないことなどがある際の、お問い合わせも受け付けているとのこと。全てを希望どおりにお応えするのはもちろん難しいことですが、美術館にできることを一緒に考えたいと思っているそうです。

来館の前に、施設側に不安なことや知っておいてほしいことなどを事前に相談・伝えられる環境があることは、だれもが安心して鑑賞を楽しむにあたり、大切な視点だと感じました。このように寄り添い、一緒に考えてくれる文化施設が増えると嬉しいですね。

このような特別鑑賞会の日には、障害のある方への来館時の配慮に加え、寝たきりの方へのリアルタイムでの遠隔の鑑賞機会を設けることもあるそうです。以前に分身ロボットOriHimeを利用しての遠隔での鑑賞を行った同館。真住さんは、今後も身体的、精神的理由から来館することができない方々へ向け、このような機会を設けていきたいと仰っていました。遠隔での鑑賞の機会は、より多くの方に自宅などからも鑑賞を楽しんでいけるよう、より良い実施方法について現在試行錯誤中とのことですので、同館で実施される際には、ライツからもみなさんに発信していきたいと思います!

  

◆「国立新美術館開館15周年記念李禹煥」展 2022年8月10日(水)~11月7日(月) 毎週火曜日休館

※今回の展覧会での特別鑑賞会は終了しております。

 

同館では、各種バリアフリー設備が完備されておりますので、通常時もどなたでもご来館いただけます。また、来館にあたってのサポートなどのご相談も随時受け付けているとのことですので、ご不安な点がある際にはお問い合わせしてみてくださいね。

▼バリアフリー情報については下記よりご確認いただけます。

https://www.nact.jp/information/barrierfree/

  

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